ガクチカとは、「学生時代に力を入れたこと」の略です。
エントリーシートや履歴書に記入すべき必須項目であり、就職活動においては重要な選考ポイントです。
人材を選考する側の企業の人事担当者は、ガクチカのどこを見ているのか。
逆にガクチカを書く側は、どういった点に注意すればいいのか。
選考を通過するガクチカという視点で、すぐに実践できる方法論を解説していきます。
【目次】
1. ガクチカとは
2. 企業はガクチカのどこを見ているか
3. ガクチカがない人はどうすればいい?
4. 企業はガクチカのどこを見ているのか
5. ガクチカと自己PRの連動性
6.まとめ
1. ガクチカとは
ガクチカとは「学生時代に力を入れたこと」の略であり、今や就職活動の面接において最も質問される項目の一つです。
その人材を見極める上で、学業成績よりもより重視されるようになってきたのがガクチカです。
かつては「体育会野球部でキャプテンでした」や「企画サークルで部長をやっていました」といった所属団体と役職を伝え、その補足説明としてのエピソードを話すのが一般的な形でした。
しかし最近はその人間の取り組み姿勢やストレス耐性など、学生が企業のビジネス活動に求められる資質を持ち合わせているかどうかを判断する手法の一つとして、ガクチカが活用されています。
つまり企業は、入社後にその人物が活躍できるかどうかを、ガクチカを通して判断しているのです。

企業はガクチカを通して、入社後活躍できる人材かどうかをシミュレーションしている
2. 企業はガクチカのどこを見ているか
では企業の採用担当者は、学生のガクチカのどこを見ているのでしょうか。
それは、“学生時代に頑張ったことを通して、その学生が何を学んだのか。その学びの過程から浮かび上がる考え方や価値観”です。
大学名や学部での偏差値は学力レベルの参考にはなっても、人間力は別です。ガクチカは、企業側が学生の人間力を推し量る重要な根拠なのです。
【企業がガクチカでチェックするポイント】
〇物事に対する基本的な姿勢がちゃんとしているか
〇成果を挙げるプロセスの型があるか
〇自社の企業風土に合う人材かどうか
ガクチカという体験事例を通じて、ある状況に直面した時、その人材はどのような考え方をして、まわりをどう巻き込み、どういう行動をとるのか。そしてどういう結果を生むのかというシミュレーションをするわけです。
3. ガクチカがない人はどうすれば?
就職活動が始まった時、「自分はガクチカに書くような誇れるエピソードは持っていない」「学生時代にそんなに頑張ったテーマがない」といった悩みをもつ人は少なくありません。
そういった場合に、どのようにすればいいのでしょうか?その解決策を、以下に記します。
3‐1. 実はガクチカは誰でも書ける
ガクチカは、採用担当者に対してインパクトを与えることができる学生時代のネタというイメージがあるのは事実です。しかし、そういった体験を持っている学生さんは一部でしょう。
多くの学生さんは、普通のサークル活動とアルバイト体験しかないという状況だと思います。
それでも大丈夫です。ガクチカは誰でも書けます。
今の活動において、問題意識を持って何らかの課題を見つけましょう。そして自分なりに解決策を考え、実行しましょう。その実行前と実行後の数字の変化が成果になるのです。
ここでの重要なポイントは、解決を考えた後どれだけ粘り強く実行できたのか、そのプロセスの途中で軌道修正するためのチェックをしたかです。成果数字はインパクトが強い方がいいですが、それほど大きな数字ではなくても、思考プロセスと実行プロセスをアピールすれば大丈夫です。
3‐2. 企業の評価基準を踏まえればOK
採用担当者の本音とは、「この学生が入社し現場に配属された後、現場の責任者から“〇〇君はよく頑張っているよ。良い人を採用してくれてありがとう!”という声が聞けるだろうか」ということです。
そのイメージが持てるかどうかの評価基準は、「現状分析→課題抽出→解決策立案→実行&成果実現」の思考回路を持っているかどうかと実行した経験があるかどうかです。
その文法に乗っ取って、学生時代の活動を落とし込みましょう。そうすることで、あなたのガクチカは明快な展開に生まれ変わるはずです。
3‐3. ガクチカネタを作ってみよう
そうはいっても、あまりにも弱いネタだとインパクトに欠けます。そこで、今やっているサークル活動かアルバイトをガクチカに応用できるように実行してみましょう。
実際に居酒屋でアルバイトしていた学生さんの例を、以下に紹介します。
【個人経営の居酒屋アルバイトをガクチカに活用した事例】
①現状把握
〇居酒屋のオーナーさんに売上と利益の現状数字を大雑把にヒアリング。飲食業の利益はアルコール類が大きく、フードの利益率は低い。
②課題抽出
〇そのお店は生ビールは比較的売れていたが、今若者に人気のチューハイ類の種類が少ないことに着目。しかも女子ウケする果汁系チューハイが品目になかった。
③解決策立案
〇そこで果実半個を使ったグレープフルーツチューハイを発案し、居酒屋オーナーに提案。味見用に作ったグレープフルーツチューハイをスマホで撮影し、組み合わせフードとしてゴーヤチャンプルとセットにしたビジュアルでポスターを制作し、店内数か所に掲示した。
④実行&成果
〇グレープフルーツチューハイを開始した当月及び翌月に、対前年同月比8%の売上UP、5%の利益率のUPが成果として出た。この成功に引き続き、次の改善策を現在検討中。

人事部が求めているポイントを押さえたガクチカを書くのが重要
4. 企業が求めるガクチカのポイント
先ほども申し上げた通り、企業にとって採用活動のGOALは「自社で活躍できる人材の獲得」です。そして、企業現場でのパフォーマンスのシミュレーションとして、ガクチカを重視しています。そのポイントを、以下に記します。
4ー1. 論理的思考能力
部活やゼミ活動、各種アルバイトなど、人によって学生時代に力を入れた対象には、様々な種類があります。それぞれの活動における“力を入れた”シーンを通して、本人に論理的思考能力がどれぐらいあるのかを企業の人事部をチェックしています。
本人の活動の中で、課題を解決するためにどのような分析を行ったのか。その倫理的思考能力は、企業の現場に入った時、職種に関わらず求められる大事な資質なのです。
4ー2. 本人の課題突破のプロセス
日常のビジネスシーンでは、想定外の事態やトラブルが発生します。その点が、必ず決まった解答がある受験勉強と大きく異なるポイントです。
学生時代に一番力を入れた活動の中で、「どんな場面に直面したのか」「その場面をどのように認識したのか」「自分の頭でどう考え、どういうプロセスを経て解決策を見出したのか」といった課題突破のプロセスを人事担当者は見ています。
4ー3. 本人の価値観
人には、それぞれの価値観があります。大都市で生まれ育った人と田舎で育った人は、価値観が異なるかも知れません。公務員の家庭で育った人と、自営業の家庭で育った人も、価値観が異なるかも知れません。
企業の人事部は、自社の現場で活躍する可能性の高いターゲット像を設定しています。そのペルソナにおいて、価値観は重要な要素です。価値観が近い社員同士は協調性が生まれやすく、離職率も低くなるという経済合理性があるからです。
4ー4. 本人の人間性
「学生時代に力を入れたこと」が就職活動の選考で重視されるようになった経緯の一つに、そのエピソードの中に本人の人間性が現れやすいというものがあります。優しい性格か、負けず嫌いか、コツコツ努力型か、一発逆転狙い型かなど、その本人のキャラクターを人事部は見ています。
それは、入社後の部署配属の大きな判断材料になります。例えば、負けず嫌い型は営業部、コツコツ努力型は経理部といった適材適所の配属パターンはどの企業にもあります。
4ー5. 企業風土との相性
採用活動において、人事部の一番大きなリスクは入社後すぐに退職してしまうことです。新人の早期退職は現場のモチベーションを下げるだけでなく、採用活動にかかったコストが損失になるという経済的な側面もあります。
そのため、企業の人事部は「現場にフィットするタイプかどうか」をガクチカを通してチェックしています。活躍している先輩社員と同じパターンのガクチカは、当然通過率は高くなるでしょう。
5. ガクチカと自己PRの違い
就職活動において、以下の3つはエントリーシートで必ず聞かれる必須項目です。また面接でも必ず聞かれるので、非常に重要です。
・自己PRについて
・学生時代に力をいれたことについて
・志望動機について
悩ましいのが、これらをどう上手にすみ分けをして書くかということです。よく悩みは、「どれも同じような内容になってしまう」というものです。
これを解決する重要なアプローチは、「相手が何を望んでいるか」&「相手のニーズを満たす」という視点です。“相手”は面接を受ける企業人事部であり、“相手のニーズ”とは志望する企業への利益貢献です。
企業とは“利益を追求する集団”であり、会長や社長、取締役といった経営陣も、決算が悪ければ交代させられるプレッシャーと戦っています。もちろん社会貢献も企業の公器としての重要な役割ですが、最優先は利益(配当)であることは間違いありません。特に近年は経済のグローバル化によって外国人株主のプレッシャーが強くなり、ますますその傾向は強まりつつあります。
では、どうすれば良いのでしょうか。
本質的には、“志望する企業が、最も欲しい人材になり切る”ということです。具体的なプロセスを、以下に記します。
【志望企業のターゲット学生像に近づく手法】
1. 志望企業の利益構造を調べる
2. 利益構造でパフォーマンスを上げるスキルを列挙する
3. 必要とされるスキルの中で、自分にあると思われるスキルを決定する
4. そのスキルと利益貢献の相関イメージがつくように書く
結論としては、以下のようなイメージです。
【具体的な書き分けのコツ】
・自己PR→その企業の利益構造の理解とその実現する手段としてのスキルを保有していることをアピールする
・学生時代に力を入れたこと→そのスキルや考え方が、どんな場面で醸成されたかのエビデンスをアピールする
・志望動議→業界の中でもなぜその企業なのか、志望企業へのこだわりを事業戦略等と結びつける
企業の人事担当者は、応募学生が同業界の他企業を受けていることは百も承知です。その上で、「なぜ、弊社に入りたいのか?」というロジックの組み立てを通して、入念なリサーチ力と分析力、プレゼン力をチェックしています。
6. まとめ
就職活動は、日本の社会構造においては、人生における最初の一世一代のプレゼンテーション大会です。
しかも、そのプロセスはその後の人生にも生きる重要なスキルになります。
就職活動における成功体験は、大きな人生の糧になり、入社後その努力をしてきた集団に交わることは、自己形成に大きな影響を与えます。
就職活動に力を入れ過ぎて学業が疎かになるのは本末転倒ですが、その後の長い人生において最初に入社する企業の影響力を考えると、努力し過ぎるということはないと思います。

入社後、現場で活躍できる人材かどうかを人事部はチェックしている