ガクチカとは、「学生時代に力を入れたこと」の略です。例えばガクチカは、エントリーシートや履歴書に記入すべき必須項目です。また就職活動においては、重要な選考ポイントです。
人材を選考する側の企業の人事担当者は、ガクチカのどこを見ているのでしょうか。逆にガクチカを書く学生側は、どういった点に注意すればいいのでしょうか。
本記事では、選考を通過するガクチカという視点で、すぐに実践できるポイントを解説していきます。
Contents
1. ガクチカとは
1-1. ガクチカの役割とは
ガクチカとは、「学生時代に力を入れたこと」の略です。今や就職活動の面接において、面接官から最も質問される項目の一つです。応募人材を見極める上で、学業成績よりもより重視されるようになってきたのがガクチカです。
かつては「体育会野球部でキャプテンでした」や「企画サークルで部長をやっていました」といった所属団体と役職を伝え、その補足説明としてのエピソードを話すのが一般的な形でした。
しかし近年の新卒の就職活動においては、ガクチカ上のストーリーを通じて、人物を見極める傾向が強まっています。
1-2. ガクチカと自己PRの違い
ガクチカは、学生時代に力を入れたことや経験です。一方、自己PRは自分の強みや長所に関することです。面接官からすると、ガクチカでは学生時代の活動に取り組んだテーマやプロセスを聞き、自己PRではどんな能力を持っているかを聞くことになります。
2. 企業はガクチカのどこを見ている?
では企業の採用担当者は、学生のガクチカのどこを見ているのでしょうか。それは、“学生時代に頑張ったことを通して、その学生がそこから何を学んだのか?その学びの過程から浮かび上がるスタイルや考え方、価値観”です。
大学名や学部での偏差値は、学力レベルの参考にはなります。しかし、人間力は別です。ガクチカは、企業側が学生の人間力を推し量る重要な根拠なのです。
◆企業がガクチカでチェックするポイント
① 物事に対する基本的な姿勢がちゃんとしているか
② 成果を挙げるプロセスの型があるか
③ 自社の企業風土に合う人材かどうか
つまりガクチカという個人の体験事例を通じて、ある状況に直面した時、その人材はどのような考え方をして、まわりをどう巻き込み、どういう行動をとるのか。そして、どういう結果を生むのかというシミュレーションをするわけです。
3. ガクチカがない人はどうればいい?
就職活動が始まった時、「自分はガクチカに書くような誇れるエピソードは持っていない」「学生時代にそんなに頑張ったテーマがない」といった悩みをもつ人は少なくありません。そういった場合に、どのようにすればいいのでしょうか?その解決策を、ここでは解説します。
3-1. 実はガクチカは誰でも書ける
ガクチカは、採用担当者に対してインパクトを与えることができる学生時代のネタというイメージがあるのは事実です。しかし、そういった体験を持っている学生さんは一部でしょう。
多くの学生の方は、サークル活動とアルバイト体験しかないという状況だと思います。よくあるのが、飲食店アルバイトや塾の講師、インターンシップやボランティアでの経験を基に書くというものです。
実は、ガクチカは誰でも書けます。今の自分の活動において、問題意識を持って何らかの課題を見つけましょう。そして自分なりに解決策を考え、実行しましょう。その実行前と実行後の数字の変化が、成果になるのです。それは、ビジネスと同じです。
ここでの重要なポイントは、自分で解決策を考えた後どれだけ粘り強く実行できたのか、そのプロセスの途中で軌道修正するためのチェックをしたかです。成果数字はインパクトが強い方がいいですが、それほど大きな数字ではなくても、思考プロセスと実行プロセスをアピールすれば大丈夫です。
3-2. 採用担当者のニーズを把握して面接に臨む重要さ
就職活動で成功するためには、応募する企業のニーズを把握し、そのニーズに応えることがとても大切です。もちろんフェーズによって企業のニーズが変動はありますが、求められる根本的な人間力は変わりません。
採用担当者の本音とは、「この学生が入社し現場に配属された後、現場の責任者から“〇〇君はよく頑張っているよ。良い人を採用してくれてありがとう!”という声が聞けるだろうか」ということです。ここは、非常に重要なポイントです。
そのイメージが持てるかどうかの評価基準は、「現状分析→課題抽出→解決策立案→実行&成果実現」の思考回路と実行した経験があるかどうかです。
その文法に乗っ取って、自分の学生時代の活動を落とし込みましょう。そうすることで、あなたのガクチカは明快な展開に生まれ変わるはずです。
3-3. 実際にガクチカネタを作ってみよう
そうはいっても、あまりにも弱いネタだとインパクトに欠けます。そこで、今やっているサークル活動かアルバイトをガクチカに応用できるように実行してみましょう。
実際に居酒屋でアルバイトしていた学生さんの例を、以下に紹介します。
◆個人経営の居酒屋アルバイトをガクチカに活用した事例
①現状把握
居酒屋のオーナーさんに、売上と利益の現状数字を大雑把にヒアリングした。ちなみに、飲食業の利益はアルコール類が大きく、フードの利益率は低い。
②課題抽出
働いているお店は、生ビールは比較的売れていたが、若者に人気のチューハイ類の種類が少なかった。しかも、女子ウケする果汁系チューハイがメニューになかった。
③解決策立案
そこで果実半個を使ったグレープフルーツチューハイを考えし、居酒屋オーナーに提案した。次に、味見用に作ったグレープフルーツチューハイをスマホで撮影した。そして組み合わせフードとして、ゴーヤチャンプルとセットにしたビジュアルでポスターを制作し、店内数か所に掲示した。
④実行&成果
グレープフルーツチューハイを開始した当月及び翌月に、対前年同月比8%の売上UP、5%の利益率のUPが成果として出た。
4. 企業が求めるガクチカのポイント
4-1. 論理的思考能力
部活やゼミ活動、各種アルバイトなど、学生時代に力を入れた対象には、様々な種類があります。そこで“力を入れた”シーンを通し、本人の論理的思考能力をチェックしています。
本人の活動の中で、課題を解決するためにどのような分析を行ったのか。その倫理的思考能力は、企業の現場に入った時、職種に関わらず求められる大事な資質なのです。
4-2. 本人の課題突破力
日常のビジネスシーンでは、想定外の事態やトラブルが発生します。その点が、必ず決まった解答がある受験勉強と大きく異なるポイントです。
学生時代の「どんな場面に直面したのか」「その場面をどう認識したのか」という課題認識力が大切です。そして「どう考えて解決策を見出したのか」といった課題突破力を担当者は見ています。
4-3. 本人の価値観
人には、それぞれの価値観があります。例えば、大都市で生まれ育った人と田舎で育った人は、価値観が異なるかも知れません。また公務員の家庭で育った人と、自営業の家庭で育った人でも、価値観が異なるかも知れません。
企業の人事部は、自社の現場で活躍する可能性の高いターゲット像を欲しがっています。そのペルソナにおいて、価値観は重要な要素です。価値観が近い社員同士は協調性が生まれやすく、離職率も低くなるという経済合理性があるからです。
4-4. 本人の人間性
人は、ある局面にぶつかった時に性格が浮き彫りになります。例えば、優しい性格か、負けず嫌いか、コツコツ努力型か、一発逆転狙い型かなど、その本人のキャラクターを人事部は見ています。
それは、入社後の部署配属の大きな判断材料になります。例えば、負けず嫌い型は営業部、コツコツ努力型は経理部といった適材適所の配属パターンはどの企業にもあります。
4-5. 企業風土との相性
採用活動において、人事部の一番大きなリスクは入社後すぐに退職してしまうことです。例えば新人の早期退職は現場のモチベーションを下げるだけでなく、採用活コストが損失になるという経済的な側面もあります。
そのため企業の人事部は、自社の風土との相性をガクチカで確認します。自社で活躍している社員と似たようなガクチカの応募者は、通過率は高くなるでしょう。
5. 自己PRとガクチカと志望動機の連動性
就職活動において、以下の3つはエントリーシートで必ず聞かれる必須項目です。また面接でも必ず聞かれるので、非常に重要です。
・自己PRについて
・学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)
・志望動機について
悩ましいのが、これらをどう上手にすみ分けをして書くかということです。例えばよくある悩みは、「どれも同じような内容になってしまう」というものです。
これを解決する重要なアプローチは、「相手が何を望んでいるか」&「相手のニーズを満たす」という視点です。“相手”は面接を受ける企業人事部であり、“相手のニーズ”とは志望する「企業への利益貢献」です。
企業とは、「利益を追求する集団」です。会長や社長、取締役といった経営陣も、決算が悪ければ交代させられます。もちろん社会貢献も企業の公器としての重要な役割ですが、最優先は利益(配当)であることは間違いありません。特に近年は経済のグローバル化によって外国人株主のプレッシャーが強くなり、ますますその傾向は強まりつつあります。
では、どうすれば良いのでしょうか。
本質的には、「志望する企業が、最も欲しい人材になり切る」ということです。そして「ガクチカ=エビデンス」→「志望動機=自己主張」の流れを作成することです。効果的な手法を、以下に解説します。
5-1-1. 入りたい企業の利益構造を調べる
まず最初に、志望企業の利益構造を調べます。例えば一番わかりやすいのは、公開企業の決算資料です。そこには、売上や利益、今後の施策のポイントが明記されています。
5-1-2. 利益貢献するスキルを書き出す
決算資料を読み込んだ後、志望企業に利益貢献できるスキルを洗いだします。例えば、「営業力」や「行動力」、「調査力」「分析力」などです。基本的に大企業になればなるほど、幅広い職種があり、多種多様なスキルを必要としています。
5-1-3. 自分のスキルと一致するものを見つける
例えば営業力の場合、先述した居酒屋で新メニューをオーナーに提案したような交渉力も良いでしょう。また分析力の場合、大学の授業やゼミ活動における作成過程での工夫も良いでしょう。ここでの重要なポイントは、自分にとっては些細なことでも、企業が求めるスキルの可能性があることです。
5-1-4. 自分のスキルと志望企業の利益貢献を結びつける
まず最初に、自分のスキルを象徴するエピソードを盛り込んだガクチカを作成します。次に、スキルを中心軸にした自己PRと志望企業の利益に貢献できるイメージが持てる志望動機を作成します。
この作成方法の重要なポイントは、自己本位の作成ではなく、志望企業のニーズから逆算していることです。極論言えば、100社受ける場合は、100通りのバージョンがあるということです。現実的には、主要ターゲット企業上位5社バージョンとその他企業用バージョンといった運用になるでしょう。
6. まとめ
新卒の就活は、ご自身のキャリアスタートという点で非常に重要です。その後の転職活動においても、最初にどの企業に入社したのかを人事担当者は必ずチェックします。また最初に入る企業は、本人の社会的風土にも大きな影響を与えます。
新卒の就活でガクチカを最大限活用するポイントをまとめると、以下になります。
・自己PRは、志望企業の利益貢献できるスキルを保有していることをアピールする
・ガクチカは、そのスキルや考え方が、どんな場面で醸成されたか、どう活用されたかの状況証拠の役割を果たす
・志望動機は、志望企業の利益構造に貢献できるストーリーを盛り込む
何事も、「段取り8分、仕事2分」です。就活が始まる前の周到な準備で、勝負は決します。
そんな気持ちにはなかなかなれないかも知れませんが、ゲーム感覚で楽しむ余裕が良い結果を生みます。
それは「遊び感覚」という意味ではなく、「全体を俯瞰する余裕が効率的な結果を生む」側面があるということです。
是非本記事を参考にして頂き、どんどん内定を獲得して下さい。